セクハラやパワハラが起こらないために、そうしたことを禁止する規定を作っている会社は多いことでしょう。
まあ、セクハラやパワハラ防止規定は法律上の義務なので当然ですが、他にも会社内でのルール、例えば、パソコンやSNSなんかの使用方法定めている会社は多いかもしれませんね。
この記事の目次
1. 規定を作るだけでは意味がない
では、そうした「○○防止規定」や「○○禁止規定」を作れば、そこで禁止したことはは絶対に起こらず、会社内でのトラブルを未然に防ぐことができるのでしょうか?
結論から言いますが、規定を作るだけでは意味がありません。
例えば「○○してはいけない」「○○するときはこうしないといけない」という規定があったとしても、労働者がそれを知っていなければ意味がないからです。
1.1. 「就業規則を周知する」とは
実は、就業規則が効力を発揮する条件に「就業規則を周知する」というものがあります。
ならば、労働者が規則の中身を知らないなんてあり得ないのでは? と思うかもしれませんが、この周知には「会社が中身を教える」ことまでは含まれていません。
労働者がいつでも読めるところに用意しておくことで周知された扱いになるので、きちんと就業規則が周知されててもその中身を労働者が知らないなんてことはざらにあるのです。
以下は、法令上で認められる就業規則の周知方法です。
- 常時各事業所の見やすい場所に掲示し、または備え付けること
- 書面を従業員に交付すること
- パソコンなどでデジタルデータとして記録し、従業員がいつでもアクセス閲覧できるようにする
2. 予防したいなら直接言え
では、こうした禁止・防止の内容を労働者に知ってもらうにはどうすれば良いかといえば、簡単なことです。
直接、労働者に教えれば良いのです。
朝礼で伝えるとか、別途そういった研修をするといった形で直接言えばそれで良く、はっきり言って、予防効果だけで見れば、規則に書くよりはこちらの方がはるかに高いでしょう。
3. 規則にできるのは「予防」ではなく「事後対応」
さて、じゃあ、こうした「○○してはいけない」「○○するときはこうしないといけない」という規定を作成する意味がないかというと、必ずしもそうではありません。
というのも、こうした「○○してはいけない」「○○するときはこうしないといけない」という規定があると、トラブルが起こった後に事後的に懲戒処分等の対応ができるからです。
というより、こうした規定がないと、トラブルを起こした労働者に対して懲戒等の処分ができないことの方が多いと考えた方がよいです。
また、「直接、労働者に教える」場合に、就業規則を使って教えることもあると思うので、そうした際に規定があると役に立つかと思われます。
4. まとめ
まとめると、
- 就業規則に、「○○してはいけない」「○○するときはこうしないといけない」といった規定を作成しただけでは予防は期待できない
- トラブルを予防したいなら、そもそも直接労働者に言った方が良い。
- ただ、規定がないと事後対応ができない
なので、服務規律に設ける禁止規定に関して、上記を考慮し、正直いらないな、と思うような禁止規定があるなら、その場合はなくしてしまってもいいかもしれません。
事後対応ができないといっても、小さい会社の場合、そもそも恐れてるようなことが起きないことも多いですしね。
ただ、冒頭で述べたとおり、セクハラやパワハラなど法律上必ず定めないといけない禁止規定等はあるのでその点は注意が必要です。
今日のあとがき
本文の補足ですが、まあ、規定なんて書くだけタダっちゃタダなんで、細かいことを考えずに入れられるものは全部入れる、という考え方もあるでしょう。
とはいえ、入れられるモノを入れるだけ入れた、辞書みたいな就業規則を作って誰が読むのかって話です(まあ、労働者に読まれたくないために敢えてそうするという考えもあるかもしれませんが)。
実際、昔、弊所で調子に乗ってそういう就業規則を作ったら、お客さんに全く読んでもらえなかった、ということもありました。
また、そういう分厚い就業規則ってメンテナンス性も悪いので、あとで法改正、となったときに直すのも一苦労。
「大は小を兼ねる」といいますが、就業規則に関しては必ずしもそうではないというのが川嶋の考えです。