労働契約

契約期間5年越えの労働者へ、無期転換の5年ルールの通知が義務づけられるかも

今年の3月30日、「多様化する労働契約のルールに関する検討会報告書」(以下、報告書)が公表されました。

多様化する労働契約のルールに関する検討会報告書(令和4年3月)(リンク先PDF 出典:厚生労働省

こちらの報告書では主に「無期転換ルールの活用状況」や「多様な正社員の労働契約関係の明確化」等が報告されています。

そして、その中で、「使用者が要件を満たす個々の労働者に対して、労働契約法 18 条(※有期雇用から無期転換の5年ルールのこと)に基づく無期転換申込みの機会の通知を行うよう義務づけることが適当」という、将来の法改正に関わる非常に気になる内容が含まれていたので、今回はそちらをみていきたいと思います。

 

1. 無期転換の5年ルールにより有期から無期に転換した労働者は約118万人

この報告書の主な報告事項である「無期転換ルール」とは、平成25年4月より施行された「同一の使用者との有期労働契約が「5 年」を超えて繰り返し更新された場合に、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換する」という労働契約法 18 条のことをいいます。

まず、報告書の前提として、この無期転換の5年ルールについては「変更の必要性はない」としています。

この無期転換ルールができたことで、多くの企業や大学等で雇止めなどの労使紛争が起きたことはガン無視のようですが、まあ、そこは置いておきましょう。

報告書では、無期転換の5年ルールの成果として、118万人ほどの有期雇用労働者が無期転換したことを報告していますが、さらにその数を増やしたい、というのが報告書の立場です。

 

2. 無期転換には「労働者の申込み」が必須

さて、有期から無期への転換者をもっと増やしたい側からすると見過ごせないのが、この無期転換ルール、「労働者の申込み」が必須となっている点。

これがない場合、例え、有期の雇用期間が5年を超えていたとしても、会社が契約を無期とする義務はありません。

労働者の申込みが必須ということは、無期転換の5年ルールのことを知らない場合、条件に当てはまっていて無期転換の意思があったとしても無期転換できない、ということです。

 

3. 5年の要件を満たす労働者へ、使用者が通知を行うよう「義務づけることが適当」

これらに加えて、労働者が無期転換の5年ルールのことを知るのは「会社から」ということが多いとされています

こうしたこともあり、冒頭の「使用者が要件を満たす個々の労働者に対して、労働契約法 18 条に基づく無期転換申込みの機会の通知を行うよう義務づけることが適当」という報告に相成ったわけです。

「義務づけることが適当」とまで報告されているので、時期がいつになるかは不明ですが、将来確実に、義務化されることでしょう。

 

4. 報告書で検討されている通知の内容やタイミング

ちなみに、報告書では、通知の内容やタイミング等についても、既に検討がされており、例えば、通知のタイミングについては、以下の3パターンが挙げられています。

① 無期転換申込権が初めて発生するより前のタイミング

② 無期転換申込権が初めて発生する契約更新のタイミング

③ 無期転換申込権が発生する契約更新ごとのタイミング

 

また、通知の内容についても、単に無期転換できることを通知するだけでなく、無期転換後の労働条件なども通知するのが適当としており、今後の動きに注目したいところです。

 

5. まとめ

以上です。

ちなみに、「要件を満たす労働者に対して通知」の義務化については、育児介護休業法で、既に前例があり、今年の4月より施行されています。

川嶋事務所へのお問い合わせはこちらから!

良かったらシェアお願いします!

  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

-労働契約