施行日とは、作成、あるいは変更した就業規則をいつから施行するかを定めるものとなります。
いつから施行するか、といった定めが就業規則にないと労務に混乱を招く恐れがあるので、とても重要な条文となります。
この記事の目次
1. 法令から見た「施行日」のポイント
1.1. 就業規則の効力が発生するのは労働者に周知したとき
作成、もしくは変更した就業規則は、労働者に周知することでその効力が発生します。
中には、労働基準監督署に就業規則を提出しないと効力が発生しない、あるいは労働者に周知してなくても労働基準監督署に提出さえすれば効力が発生すると勘違いしてる人もいますが、これらは間違いということです。
仮に、労働者に周知はしているけれども労働基準監督署に就業規則を提出していないという場合、労働基準法に定められている就業規則提出義務違反にはなるものの、就業規則の効力自体は発生します。
1.2. 労働者への周知と施行日の関係
とはいえ、労働者に周知した瞬間に効力が発生するとなると、それはそれで運用上支障が出ます。
例えば、4月1日から新しい就業規則を適用したいという場合、それより前にも後にも労働者全員に周知することができなくなってしまいます。要するに、周知する日程に縛りが生まれてしまうわけです。
一方、施行日を定めておけば、事前に変更内容を労働者に周知をしておけば、施行日から新しい就業規則を適用することができます。
2. 「施行日」条文の必要性
施行日に関する条文は就業規則の絶対的・相対的必要記載事項ではないため、定めないこともできますが、就業規則の運用面を考えた場合、作成しない理由はまずないでしょう。
3. 「施行日」条文作成のポイント
3.1. 附則として定める
施行日については就業規則の最後に「附則」として定めるのが普通です。
就業規則は通常、労働時間や服務規律といった、会社のルールを定めるものですが、こうした規則の中身を一般的に「本則」といいます。
一方、こうした本則について、付随的な内容を定めるのが附則です。
施行日は、就業規則本則に定めるような会社のルールではないものの、本則がいつから有効かという付随的な内容を定めるため「附則」となるわけです。
なお、附則には通常、条文番号を振ることはありません。
3.2. 短いスパンでの法改正への対応法
法改正のスケジュールによっては、3か月や半年など短いスパンで改正法の施行があることがあります。
こうした短いスパンのあいだに何度も就業規則を変更することは正直手間です。
かといって、1度の変更で済ませようとして、期日の遅い方に合わせてしまうと、しばらくの間、会社は違法な状態となってしまいます。
就業規則の施行日を規定ごとに定める
こうした場合にも利用できるのが施行日です
具体的には、法改正の施行日に併せて、それに対応する就業規則の変更箇所ごとに、別々の「施行日」を定めておけば、いちいち
例えば、令和4年4月1日から施行の規則と、令和4年10月1日から施行の規則があった場合、附則で以下のように定めておけば良いのです。
(施行日)
1 この規則は、令和4年4月1日より施行する。
2 前項にかかわらず、本規程第○条については令和4年10月1日より施行する。
これにより、施行日が速いほうに合わせて就業規則を変更、提出しても、遅い方の施行日のときには何もしなくて済みます。
規定を廃止する場合も施行日を活用
また、法改正によって、一部の規定を廃止しないといけなくなった、という場合も同様の方法が使えます。
例えば、令和4年にあった育児介護休業法の改正でいうと、出生時育児休業(男性版産休)が導入される代わりに、法改正前に存在したパパ休暇の規定は不要となるので、それを破棄するような附則を入れておくと、就業規則の変更の際の手続き上の手間を省くことができます。
本規程(※)第○条の出生時育児休業については令和4年10月1日からの施行とする。この施行と併せて、第□条△項のパパ休暇の規定は破棄する。
※ 育児介護休業規程を想定
4. 就業規則「施行日」の規定例
(施行日)
この規則は、 年 月 日より施行する。
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