年金・健康保険制度

情報流出に対する年金機構のこそ泥のような対応の一部始終

2015年11月10日

年金機構の情報流出の件、世間的にはあまり話題に登ることもなくなってきていますが、実はうちの関与先で漏れていた人が何人かいまして、それにまつわるちょっとした事件が最近あったので今回はその話。

先に断っておきますが、この件で主に対応したのはうちの事務員なので、以下の記事はすべて実話とはいえ、あくまで又聞きドキュメンタリーとしてお読みいただければと思います。

 

0.1. 社保の取得に労働契約書?

始まりは1件の社会保険の被保険者加入の手続きでした。この社保の加入手続きっていうのは、通常なら数日、長くても1週間もあれば終わる手続ですが、なぜか、これがいつまで経っても終わらない。同日に行った同じ事業所の別の労働者の加入手続きはとっくに終わっているのに、です。

で、いつまで経っても終わらないし、事業所の方からも保険証が届かないということで事務所の方に問い合わせもあったりで、年金機構に確認してみようかと思っていたらその事業所の管轄の年金機構から電話が。で、それがどんな電話だったかというと、

「○○さんの社会保険の加入手続きがしたいので、労働契約書を提出してほしい」

????????????????????

Why Japanese People!!!!!!!!

わたしにかぎらず、同業の社労士や会社の人事・労務担当者の方なら耳を疑うこと間違いなしでしょう。Why Japanese People!と言うかは別にして。

なんで、社会保険の取得に労働契約書がいるんだ?

ご存じない方に言っておきますが、社会保険の加入手続きって、基本的に添付書類は必要なく、申請書一枚書いて出せばそれでおしまいなんですよ。

もちろんうちの事務所だって、社会保険の加入手続きで労働契約書を添付したことなんて今までございませんよ。

 

0.2. 役所体質が抜け切らない年金機構

で、そんなアクロバティックな要求をしているのに電話口の年金機構の職員はその理由をなかなか話そうとしない。

いいから出せ(とはさすがに言ってないと思うが)と言わんばかりの対応だったらしく、私が出ていたら間違いなく、はっはーん、さてはこれ詐欺だな、と思って切りかねない。ただ、詐欺にしては労働契約書なんて何に使うんだという話なので、粘り腰でよくよく事情を聞いてみると、どうもその社会保険の加入が滞っていた労働者というのは例の事件で年金番号が漏れたうちの1人だったというわけ。

 

…、だったらはじめからそう言え!

 

コソコソしやがって。言いたくないのはわかるけど、絶対に言わないとダメでしょその情報。労働契約書ってのは、関与先の労働者の個人情報なわけですよ? それを仮にも社会保険労務士が、手続に必要だからという意味不明な法的根拠も乏しい理由で提出の要求に応じるわけがない。社労士法で社労士は行政に協力しないといけないと定まってるとか、もうそういう問題じゃないわけです。

何というか、本当、傲慢ですよね役所って。年金機構は厳密に言えば民間だけど、心は役所。役所の名前出せばこっちがホイホイ書類を出すとでも思ってるんでしょうかね。そんなだったらそれこそ役所の名前を語った詐欺はやりたい放題ですよ。

 

ただ、今回の件、労働者側にもちょっとした特殊事情というのがありまして、その労働者さん、あまり自宅に帰っていなかったらしく、郵便等をきちんと受け取ってなかったみたいなんですね。

そのため、年金情報が漏れたことに本人も気づいてなければ、会社も気づいていない、手続を委託されてるうちの事務所だって知る由もなく、漏れた方の年金番号で手続を行っていたため事態の把握が遅れてしまいました。

一方の機構側は、そのことを当然知っていると思って上のような対応したとしたら、まあ、上のような態度もわからないでもないような気がしたけどやっぱりダメだ。ちゃんと理由ぐらい説明してください、大人として。

ちなみに手続が遅れていたのは申請日時点では新しい年金番号がまだ振り出されていなかったから。また、労働契約書の提出が必要だった理由は、古い年金番号での申請だったので、事実証明というか実在証明のような形で労働者契約書がほしかったようです。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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