その他法改正

制度の個別周知・意向確認など改正育児介護休業法の省令案を解説

2021年7月27日

前回に引き続き、今年(令和3年)改正された育児介護休業法と合わせて改正される、育児介護休業法の省令案についてみていきます。

前回の記事では主に男性版の産休こと出生時育児休業に関する省令案をみたので、今回はそれ以外の改正内容について。

なお、現時点ではあくまで案ですので、実際の改正の際には変更される場合がある点、ご了承ください。

 

1. 妊娠・出産(本人又は配偶者)の申出をした労働者に対して事業主から個別の制度周知及び休業の取得意向の確認のための措置を講ずる義務

来年(令和4年)の4月1日より、妊娠・出産(本人又は配偶者)の申出をした労働者に対して事業主から個別の制度周知及び休業の取得意向の確認のための措置を講ずる義務が発生します。

 

1.1. 周知が必要な制度等

個別の制度周知の際に、周知しなければならない内容について、省令案では以下のものが挙げられています。

  1. 育児休業に関する制度
  2. 育児休業申出の申出先
  3. 育児休業給付に関すること
  4. 労働者が育児休業期間について負担すべき社会保険料の取扱い

取り立てて説明する必要もない、至ってノーマルな内容ですね。

 

1.2. 個別の制度周知・意向確認の方法

また、事業主が労働者に対して行う個別の制度周知・意向確認の方法についても、省令案が出ており、省令案では次のいずれかの方法によって行うものとされています。

  1. 面談による方法
  2. 書面を交付する方法
  3. ファクシミリを利用して送信する方法
  4. 電子メール等の送信の方法

(3.及び4.は労働者が希望する場合に限る)

 

1.3. 実子以外の休業等の場合

個別の制度周知及び休業の取得意向の確認は、実子の妊娠・出産に限るものではなく、養子縁組等「その他これに準ずるものとして厚生労働省令で定める事実」の場合には、会社側は措置を実施する必要があります。

ここでいう「その他これに準ずるものとして厚生労働省令で定める事実」とは、省令案では具体的に以下の通りとされています。

  1. 労働者が特別養子縁組の監護期間にある子を養育していること、養育する意思を明示したこと
  2. 労働者が養子縁組里親として委託されている子を養育していること、受託する意思を明示したこと
  3. 労働者が養子縁組を希望して一歳に満たない者を受託しようとしたが、実親の同意が得られなかったため、養育里親として一歳に満たない者を委託されていること又は受託する意思を明示したこと

そもそも、育児休業自体、特別養子縁組の監護期間にある子や、養子縁組里親に委託されている子等に関する育児も対象となっているので、上記の内容はそれに合わせたものといえます。

 

2. 育児休業の申出・取得を円滑にするための雇用環境の整備に関する措置

改正法施行後は育児休業の申出・取得を円滑にするための雇用環境の整備に関する措置として、会社の規模にかかわらず、以下のいずれかの措置を実施する義務が発生します。

  1. 雇用する労働者に対する育児休業に係る研修の実施
  2. 育児休業に関する相談体制の整備
  3. その他省令で定める育児休業に係る雇用環境の整備に関する措置

今回の省令案では上記の3.について、以下の通り具体的な内容が挙げられています。

  1. 雇用する労働者の育児休業の取得に関する事例の収集及び当該事例の提供
  2. 雇用する労働者に対する育児休業に関する制度及び育児休業の取得の促進に関する方針の周知

 

3. 1歳から1歳6か月、あるいは1歳6か月から2歳までの育休の再取得

1歳到達時点の段階で入る保育園等が見つからない場合、1歳から1歳6か月、それでも足りない場合は1歳6か月から2歳までの育休の延長が行われます。

この延長の申出は原則1回ずつしかできません。

しかし、今回の法改正では厚生労働省令で定める特別な事情に該当する場合はもう一度の申出、すなわち再取得が可能とすることとされました。

この厚生労働省令で定める特別な事情に関する省令案は以下の通りです。

  1. 第2子以降の産前産後休業により、育児休業が終了したが、産前産後休業に係る子が死産となった場合等
  2. 第2子以降の新たな育児休業により、育児休業が終了したが、新たな育児休業に係る子が死亡した場合等
  3. 介護休業により、育児休業が終了したが、介護休業に係る対象家族が死亡した場合等

ちなみに、1歳到達までの育児休業中に上記に該当した場合、現行の制度でも、育児休業の再取得は可能であるため、今回の法改正及び省令案はこれに合わせたといえます。

 

4. まとめ

以上です。

他の制度の内容を踏襲するものが多いため、きちんと法改正の内容を把握していれば、それほど迷ったり悩んだりするようなものはないのかな、という印象ですね。

省令ではなく、法改正の解説について以下の記事をどうぞ。

資料:育児・介護休業法の改正を踏まえた主な省令事項①(令和4年4月1日施行)(案)(出典:厚生労働省 第39回労働政策審議会雇用環境・均等分科会

育児・介護休業法の改正を踏まえた主な省令事項②(公布の日から1年6月以内施行)(案)(出典:厚生労働省 第39回労働政策審議会雇用環境・均等分科会

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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