追記:令和3年9月7日、厚生労働省より令和2年度に行われていた「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」の再開が発表されました。
さて、現在のコロナ禍の口火を切ったともいえる政府の対応といえば、昨年3月の学校等の休校でしょう。
新型コロナへのこれまでにない政府の対応により、一気に国内の危機感が増し、その後の緊急事態宣言に繋がりました。
この学校等の休校対応のために創設されたのが「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」でした。
この「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」は、学校等の休校により子どもの面倒を見ないといけなくなった労働者を有給(法定で定められている年次有給休暇とは別)で休ませる場合に、その有給分の賃金を助成するというものでした。
この記事の目次
1. 小学校休業等対応助成金は令和2年度までで一区切り
ただ、2回目以降の緊急事態宣言やまん延防止措置では、学校等を休校するという措置は行われていません。
そもそも新型コロナにおいては若い人ほど重症化する可能性は低い上、学校休校による子どもたちの精神面での健康低下やネグレクト等の問題の発生など、新型コロナ以上に深刻な問題も発生していることが、その要因かと思います。
そのため、現状、学校等が新型コロナで休校する場合というのは、学校内でクラスターが発生した場合等に限られています。
こうした状況と併せて「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」の活用の機会は最近ではかなり少なくなっており、令和3年3月31日まででこの助成金は終了することになりました。
2. 令和3年度からは若干のモデルチェンジ
2.1. 「両立支援等助成金 育児休業等支援コース「新型コロナウイルス感染症対応特例」」
ただ、先ほども述べたように、今後もクラスターが発生すれば学校等が休校する可能性はあります。
そのため、今年の4月からは「両立支援等助成金 育児休業等支援コース「新型コロナウイルス感染症対応特例」」によって、学校等の休校により子どもの面倒を見ないといけなくなった労働者を有給(法定で定められている年次有給休暇とは別)で休ませる場合の助成が行われます。
ただし、小学校休業対応等助成金と比べると支給の条件や支給内容が変更されている他、助成の規模も縮小されていることに注意が必要です。
2.2. 小学校休業対応等助成金は太っ腹だった
小学校休業対応等助成金は緊急時の助成金ということもあり、なかなかに太っ腹な助成金でした。
小学校休業対応等助成金では、一人1日あたりの助成額に上限(日額上限1万5千円)こそありましたが、それ以外の制限はほぼありません。
よって、子どものいる労働者を有給で休ませた場合、会社が労働者に支払った有給分の賃金が、ほぼ丸ごと助成金として返ってきました。
しかし、今回の「両立支援等助成金 育児休業等支援コース「新型コロナウイルス感染症対応特例」」は「学校等の休校により子どもの面倒を見ないといけなくなった労働者を有給で休ませる」ことを支給の要件とはしているものの、その内容は「小学校休業対応等助成金」とはかなり異なります。
3. 「両立支援等助成金 育児休業等支援コース「新型コロナウイルス感染症対応特例」」の支給条件
3.1. 有給の規定化と両立支援の仕組みの周知
まず、「両立支援等助成金 育児休業等支援コース「新型コロナウイルス感染症対応特例」」では「学校等の休校により子どもの面倒を見ないといけなくなった労働者を有給で休ませる」ことを就業規則もしくは労働協約によってきちんと規定化しておく必要があります。
「小学校休業対応等助成金」では、こうした有給について必ずしも規定化しておく必要がなかったため、注意が必要です。
これに加えてさらに「小学校等が臨時休業等した場合でも勤務できる両立支援の仕組み」を設け、それを労働者に周知する必要があります。
この両立支援の仕組みとは具体的には以下の通りです。
- テレワーク勤務
- 短時間勤務制度
- フレックスタイムの制度
- 始業又は終業の時刻を繰り上げ又は繰り下げる制度(時差出勤の制度)
- ベビーシッター費用補助制度 等
3.2. 規定化・両立支援の仕組みの周知を行った上で有給4時間以上取得が条件
このように、本助成金では「小学校等の休業に対応するための有給」と「両立支援の仕組み」を事前に準備しておく必要があります。
その上で「労働者一人につき、規定に定めた有給を4時間以上取得 」することが、本助成金の支給条件となります。
まとめると以下の通り。
A 小学校等(小学校、保育園、幼稚園など)が臨時休業等になり、それに伴い子どもの世話を行う必要がある労働者が、特別有給休暇(賃金が全額支払われるもの)を取得できる制度を規定化
B 小学校等が臨時休業等した場合でも勤務できる両立支援の仕組みを労働者に周知
→A,Bを達成した上で「労働者一人につき、Aで定めた有給を4時間以上取得 」で、助成金が支給される
つまり、本助成金は小学校休業対応等助成金のように、有給で支払った賃金を直接補償するものではなく、条件を満たした会社に対して一定額の助成金が支給されるものとなっているのです。
4. 助成額とその上限
気になる助成金の額は以下の通りです。
- (有給を取得した)労働者1人あたり5万円
- 支給対象となる労働者の人数は、事業主につき10人まで(よって、助成金の上限は50万円)
有給で休ませた際の賃金を直接補償するものではない関係上、休ませた日数や時間が短い場合、実際に有給として支払った額よりも多くもらえる可能性がある一方で、学校の休校が長引いた場合、逆に支払った額未満しか助成金をもらえない、ということが起こりえる制度となっています。
また、小学校休業対応等助成金のときにはなかった、労働者の人数の上限があることにも注意が必要です。
5. この助成金、ぶっちゃけあり?
では、この助成金を活用するの、正直、ありなのか、なしなのかでいうと、正直なし気味。
小学校休業対応等助成金と比べると、事前の準備が必要な上、準備したとしても実際に休校が起こるかどうかもわからないからです。
また、今後、去年のような全国的な学校の休校が起こったとしたら、小学校休業対応等助成金のような特別な助成金が新たに創設される可能性も高いと思います。
なので、子育てをする労働者の数が多いので、その子どもの学校がコロナで休校になる可能性が高いとか、子育てをする労働者を支援するため、こうした制度を充実させたい、という場合でなければ、個人的にはあんまりやる必要はないのかなあ、と思っています。
助成金のさらに詳しい情報や、申請様式については、以下の厚生労働省のサイトやリーフレットをご確認ください。
両立支援等助成金 育児休業等支援コース「新型コロナウイルス感染症対応特例」のご案内(リンク先PDF 出典:厚生労働省)