1. A4 事業場外みなし労働時間制を利用するのが一般的ですが、通信機器の発達により昔と比べて注意する点が増えています
1.1. 事業場外みなし労働時間制とは
事業場外みなし労働時間制とは、外回りなどで会社内にいない時間の労働について「◯時間」働いた、とみなす制度です。
例えば、1日中外回りをしている営業職の労働者の場合で、事業場外のみなし時間を「8時間」とみなした場合、実際の労働時間が7時間であろうと、9時間であろうと、8時間働いたとみなし、その時間に基づいて賃金が支払われます。
ただ、この制度は、労働者が事業場内にいないため、会社が当該労働者に対して具体的な指揮監督ができず、労働時間を算定することが困難だからという理由で、このような扱いが許されてきました。
1.2. 近年では労働者が外にいても労働時間の把握は容易
一方、現在では、携帯電話やスマートフォンといった通信機器の発達により、会社が外に出ている労働者の行動を把握っすることや指揮監督することは決して難しくなくなっています。
そのため、安易に営業職だから、という理由でこの事業場外みなし労働時間制を利用するとあとあと「実は時間外労働がこれだけあった」、と訴えられかねません。
実際、平成26年にはバスガイドの労働時間を「事業場外みなし」で計算していた会社が訴えられて負けています。
阪急トラベルサポート事件(リンク先PDF)
よって、外回りの営業社員の労働時間については「みなす」のはリスクが高いといえるでしょう。
逆に、これだけインターネットなどの通信網が身近になったことを会社も利用して、スマートフォンやPCを利用して、事業場内労働者と同様に把握していくほうがリスクは少ないと考えられます。
1.3. 在宅勤務と事業場外みなし労働時間制
一方、在宅勤務の事業場外みなし労働時間制については、政府がテレワークの推進を行っていることもあり、政府は利用を推奨しています。
ただし、注意点も多く、在宅勤務の事業場外みなし労働制の適用についてはガイドラインで示されている以下のないように気をつける必要があります。
① 当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること。
② 当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと。
③ 当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと。
上記の条件から言えるのは、在宅勤務で事業場外みなし労働制を適用する場合、会社が当該労働者にこまめに連絡したり、こまめに報告を求めたりといったことは難しいということです。
よって、在宅勤務の労働者に事業場外みなし労働時間制を適用するというのは、文字通り「労働者に業務を任せる」必要があり、それができないのであれば適用は難しいということになります。